一期一会
〜Treasure Every Meeting〜
まずは第43回の学術集会を会長として担当させていただくことを大変光栄に存じます。医学部を卒業し、地方で整形外科医療に従事していた頃、毎日のように搬送されてくる高齢者の骨折症例の多さに、骨折の治療以外にも、何らかの取り組みが必要なのではないかと感じ、骨の研究の世界に飛び込んだ時に入らせていただいたのが日本骨代謝学会でした。
骨の勉強をしてみると、骨には破骨細胞や骨芽細胞、骨細胞のほか、血管内皮や骨膜細胞など、さまざまな細胞が存在し、M-CSFやRANKL、OPG、FGF23、Sclerostin、BMP、Wntなどの多くのサイトカインや成長因子がこれらの細胞に作用し、c-FosやNFATc1、NFkB、Runx2、Sp7などの転写因子が活性化され、Cathepsin KやDC-STAMP、また細胞外マトリックスタンパク質などの機能分子の発現が誘導されることなどが次々と明らかにされていくことを目の当たりにしました。
整形外科や内科、歯科、組織、代謝、基礎、など、さまざまな視点を持った研究者が、さまざまなアプローチで多くのことを解明していきました。実験手法もscRNAseqやCRISPR/Cas9など、急速に発展してきております。また、研究領域も骨にとどまらず、昨今でいうところのダイバーシティ的広がりで、筋・腱・靭帯、免疫、造血、骨系統疾患、がん、コホートなど、さまざまな領域との融合研究が生まれ、発展していきました。さらには、骨代謝研究からはRANKLやSclerostin、FGF23を標的とした薬剤なども開発され、臨床に応用されるなど、大きな貢献と足跡を残してきました。これらの発展には、多くの研究者の切磋琢磨や議論が背景にあったことは間違いありません。
そこで、本学術集会のテーマは「一期一会〜Treasure Every Meeting〜」とさせていただきました。「一期一会」は一生に一度だけの機会、と言う意味ですが、本学術集会が皆様にとってまさにそのような機会になれば望外の幸せです。また、完全現地での学会とさせていただきましたので、現地でさまざまな研究者と接することで、宝物のような発想や共同研究が生まれる、という願いを込めて、副題には「Treasure Every Meeting」としました。
今回、長い日本骨代謝学会の歴史の中で初めて熊本での開催になります。長らく私を育ててくれている日本骨代謝学会や関係の皆様に少しでも恩返しができるよう、素敵な学会を準備して、皆様をお迎えしたいと思います。